第二十二卦「山火賁」卦の「象伝」はこう語る:山下有火、賁。君子以明庶政、無敢折獄。
(易海陽光翻訳:山の下に火が燃える、賁卦の象である。君子は賁卦から学び、正々堂々で政務を処理し、裁判や牢獄については、軽率に関与してはいけない。)
ここで注意してほしいのは、「火雷噬嗑」は「先王」と言ったが、「山火賁」では、「君子」と語る。
どれが上なのか、どれが下なのかが一目瞭然で分かった。
「君子」は「先王」が作った法律に基づいて、実行する役割を担う。
ただし、「山火賁」卦の君子は、執法権を有するのではなく、庶政しか務める権力を有しないのだ。
儒教がいう君子とは、一般庶民と違って、社会の中流階層であり、人格、学識、徳行ともに優れ、一般庶民の見本になるような人物を指す。
また、国家の行政を支える有能者である。
「易伝」がいう君子は、一般に国の大臣を指す。
「庶政」とは、庶民の日常的な行政事務であり、法律に沿って政策を実行する権力である。
「無敢折獄」とは、立法や司法審判に関与してはいけないことを語る。
したがって、「山火賁」卦は、国の行政権を語り、行政は司法審判と分けて、節介してはいけないと明白的に語った。
ここで少し易経の基礎知識を詳解しよう。
一つの卦は一つの物事を表す。
六つの爻は、一つの物事が最初から最後まで、六つの段階に分けて分析する。
「易経」は一つの卦を見るとき、それだけを見るのではなく、互卦、変卦、錯卦、綜卦、雑卦などいろいろな見方がある。
その理論根拠は、一つの物事を分析する際に、表だけではなく、裏面、反対面、対立面、内部などそれぞれの立場より、物事を総合的に分析するのだ。
したがって、一つの卦は、実際に判断する時、いくつかの違う卦に変ることができる。
この分野については、本文では全部述べないが、関連性のある綜卦だけ説明する。
綜卦とは、一つの卦を180度回転して、新しい卦を得られる。このようにできた新しい卦は、最初の卦と綜卦という。
綜卦という考えは、一つの物事を見る際に、その反対面からのことも考慮しながら、物事の発展と変化を分析する。
または、二つの真っ反対の立場から、物事はどのようになるかを分析する。
例えば、第二十一卦「火雷噬嗑」を180度回転したら、得られた卦は第二十二卦の第二十二卦「山火賁」になる。
「火雷噬嗑」と「山火賁」は切っても切れない厳密な関係を有する綜卦である。
したがって、「火雷噬嗑」と「山火賁」卦は国の公権力の立法と行政の二つの違う部門を代表する。
(つづき)
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