易経入門

「易経」が提出した古代中国の法治思想 ⑤

雷水解卦は、「雷雨作、解」(象伝)と語る。孔子は解卦の象から、天地自然は雷雨より解散や樹から葉っぱが散らかすことがあるのに、人間は犯したある程度の過失を赦免するべき、もしくは過失に応じてなるべく軽く処罰して、相手に是正するチャンスを与えるべきだと語る。

特に死刑囚に対して、慎みながら処刑するべきと語る。

これに対して、易経の第六十卦の「風澤中孚」卦は、なるべく少なめに死刑判決を下す、仁愛の思想を十分に表した。

中孚卦の象伝はこう語る、「澤上有風、中孚。君子以議獄緩死」

(澤の上に風があり、中孚卦の象である。君子はこの象を見て、慎重に裁判をして、死刑判決をするべき。)また、死刑囚に対して、すぐに死刑を執行せず、猶予するべき)。

犯行を起こした犯人は法律にしたがって判決を下るべき、法治社会を維持する基盤である。

ただし、なぜかこの人は犯罪を起こしたのか、この人の過去の経歴を見て、適正の処罰を与えているのかどうかを総合適に判断するべき。

これは司法の執行猶予である。

風澤中孚卦は、誠信を語る卦である。

上卦の巽卦は教化、徳行、徳育などを司る。

下卦の兌卦は民衆を代表する。

統治者は庶民が犯罪を起こさないように、まず民衆を教化するべき。

社会に基礎教育を普及し、国民はみんな教育をさせて、国全体の教育レベルを向上すれば、国民全体の道徳水準は自然に向上できるのだ。

戦後の日本政府はこのようにし続けて来たのだと思う。

したがって、風澤中孚卦は、統治者に、まず庶民に徳育を普及し、起こした過ちを軽く刑罰するべき。

どうしても教化できない凶悪犯に対して、死刑判決を下せばいいと語る。

故に孔子は、「論語・尭日篇」にこう語る、「不教而殺謂之虐」(教化せずに殺すことは虐殺という)。

民衆を教化せず、過ちを起こすと、すぐに死刑するのが、暴虐であり、暴政であるのだ。

中孚卦は司法審判に対して、警察や裁判官に案件を審理するとき、十分かつ慎重に審理するべき。

すぐに軽率に判決を下すのではなく、充分に論議する。

特に死刑判決を下した場合、十分の執行猶予期間を設け、できるだけ死刑を執行しない。

こうすると、最大限に冤罪をなくすことができる。

これは孔子の仁治の思想である。

まとめ

 アメリカ合衆国最高裁判所の建物の東側のペディメントの中央に、左側から孔子(紀元前552年~479年)、モーセ(紀元前16世紀または紀元前13世紀、古代イスラエルの民族指導者)とソロン(紀元前639年頃~紀元前559年、古代アテナイの政治家、立法者)という異なる文明の三名の聖人を彫られている。

孔子は人類に対する最もの貢献は、儒教だけではなく、「易経」に対する解釈である。

孔子の弟子達は、孔子の「易経」に対する解釈をまとめ、「易伝」という名で伝世した。

「易伝」は易経に基づいて、古代中国の人文思想を詳細に分析、説明をした。

孔子は国家統治にとって、法治または三権分立の重要性に対して、詳しく解析し、統治者の権力の過度集中を防ぐためであり、今の時代でも重大な意義がある。

そのため、アメリカ合衆国最高裁判所の建物の上に、孔子の象を彫刻し、孔子の法治思想を記念するのではないかと思う。

 しかし、三権分立の社会は、欧米や日本では一般的な常識になっている21世紀の今日、最もその思想を提出した孔子の故郷である中国は、いまだに法治社会にもなっていないので、非常に残念なことだ!

© 2022 易海陽光

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