「易経」は、いまからおよそ6000年以上前に形作られた、中国最古の哲学書にして、東洋思想の根幹を成す古典です。
その成立には、三人の聖人の手が加えられたと伝えられています。
- 伏羲(ふっき)──紀元前3000年ごろ、天地自然の変化を象徴する「八卦」を創出。
- 周文王(しゅうぶんおう)──紀元前1000年ごろ、八卦を発展させ、六十四卦の構造を作成、卦辞を加えて体系化。
- 孔子(こうし)──紀元前500年ごろ、深い注釈を加えた「易伝(えきでん)」を著し、哲理と実践の両面から「易経」の思想を完成させました。
この三聖によって、「易経」は占いの術から、人生と宇宙を読み解く知恵の書へと昇華されていったのです。
孔子が「もし50歳から学べば、大きな過ちは避けられた」と語った書
孔子は「假我数年、五十以学易、可以無大過矣(たとえ私が50歳から易経を学び始めたとしても、大きな過ちは犯さなかっただろう)」と述べ、人生における羅針盤としての「易経」の価値を称えました。
また、唐代の名臣・虞世南(ぐ せいなん)は、「不読易、不可為将相(易を読まぬ者は、将軍や宰相にはなれない)」と断言し、国家のリーダーにとって不可欠な学問と位置づけたのです。
荀子の言葉──「易がよく分かる人は占わない」
荀子は『大略』の中で、「善為易者不占」と述べました。これは、「易を深く理解している者は、占いを必要としない」という意味です。
この言葉は、決して「占いを否定している」わけではありません。むしろ、荀子はこう語ります。易の理をしっかりと身につけた人間は、自然や社会の変化の流れ(陰陽の道理)を読み取り、外から特別に「占い」という手段を用いずとも、未来の兆しや可能性を見極めることができる。
つまり、荀子にとって「易」とは、ただの予言や占断の道具ではなく、この世界の原理を読み解くための学問だったのです。
そして、「占い」はその一部にすぎず、理(ことわり)を究めれば、占う必要さえなくなるという高みを示しています。(占い術では「外応」の境)
中国文化の根幹にある「易経」
「易経」は、単なる占いや風水の書ではなく、中華文明そのものを支える源流です。
儒家、道家、法家、兵家、陰陽家など──中国古代の諸学派(諸子百家)の思想的基盤も「易経」にあります。
さらに、漢字の形成や、漢方医学、古代文学、天文学、数学、建築学などといった、あらゆる分野の学問体系が、「易」の理を基礎にして形成されました。
なぜ、今「易経」を学ぶのか?
「易経(えききょう)」は、中国最古の思想書にして、東洋哲学の根本とされる書物です。けれども、それは決して“古びた書物”ではありません。
むしろ、激動する現代社会にこそ必要とされる、生きた智慧の宝庫なのです。
では、なぜ今、私たちは「易経」を学ぶべきなのでしょうか?
1.変化の時代を生き抜くための「原理」を学ぶ
2.自分自身と向き合うための道具
3.人間関係・仕事・家庭…すべての悩みに通じる知恵
4.教養の最高峰としての価値
5.現代社会の混乱を超えて「心の安定」を得る
結びに──「易経」は、未来を占うためではなく、今を生き抜くための書
「易経」は、単なる風水・占いの書ではありません。
それは、人生に訪れるあらゆる変化に立ち向かい、乗り越えていくための智慧の書であり、東洋思想が辿り着いたひとつの頂点です。
混迷する現代社会にあってこそ、私たちは古人の知恵に学び、自ら判断し、進む力を養うべき時を迎えています。
今こそ、「易経」を学ぶ意味があるのです。
――それでは、ご一緒に、易海陽光とともに
この深遠なる易経の世界をのぞいてみませんか?
©2025易海陽光
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